徳川四天王

徳川家の四天王酒井忠次本多忠勝榊原康政井伊直政をテーマにした小説。
のはずなんですが、メインは本多忠勝で他の三人はサブ的な扱いです。
あまり指摘されることもありませんが、固く団結していた徳川家でも当然派閥争いはあり、豊臣家の様に武官対文官の対立はあったかもしれませんね。

本作は謀将真田昌幸〈上〉 (角川文庫)徳川御三卿 (徳間文庫)など面白い本を書いている筆者にしてはなにか物足りないですね。
読んだ時に感じたのですが、なんか博物館の解説書を読んでいるような気がします。
一番盛り上がりそうな戦闘シーンも軽くふれる程度ですし、4人をまとめて扱ってしまったので焦点がしぼりきれなかったんですかね。
どうせなら一人一人を主人公にした4巻組でも面白いと思うのですが。
それだけの価値はある4人だと私は思います。
文章が簡単で説明も丁寧なので歴史小説初心者には読みやすいですが、その他の人には物足りないでしょうね。
電車の中で軽く読むにはいいのかもしれませんね。
あまり面白い本だと熱中しすぎて乗り過ごしてしまう危険性がありますからね(笑)

徳川四天王〈上〉

徳川四天王〈上〉

覇商の門

戦国時代の豪商今井宗久の一代記。
武将中心になりがちな戦国時代の小説で数少ない商人を主人公にした物語です。
戦国時代の商人と武将の関係を見ていて、古今東西権力者と商人の関係って余変わってないんだなと思ってしまいました。(笑)
文章が簡単で読みやすくはあるのですが、その分書き込みが少なく軽く感じてしまいました。
電車の中の時間を使って読むのにはいいのかもしれませんね。

覇商の門 (上) (祥伝社文庫)

覇商の門 (上) (祥伝社文庫)

蒼き海狼

文禄・弘安の役の後、更なる元の襲来におびえる鎌倉幕府
そんな幕府は元に官庁を派遣して情報を集めることにした。
選ばれたのは鎌倉幕府草創期の功臣朝比奈一族の末裔だった。
船に関する情報を集めるためには海の一族である朝比奈家はうってつけだったからだ。
しかし朝比奈家は北条家の権力掌握の過程で反逆者とされて、一族は韓国の済州島に逃れたが、そこも元の攻勢の前に征服されてしまった。
間諜に選ばれたのは済州島で父母を失い天涯孤独の身で先祖の地を訪ねてきたが、反逆者の一味となることを恐れた知り合いに密告されて罪人となった男だった。
そんな鎌倉幕府にも元にも恨みを持つ男の決断とは?
虎の城 (上)」で注目を集めた火坂雅志さんの本です。

蒼き海狼 (小学館文庫)

蒼き海狼 (小学館文庫)

復讐の血族

ジャック・ヒギンズが送るショーン・ディロンシリーズの最新作
今回の作品ではベドウィンイングランドの両方から戦士の血を受け継いだ兄弟達が母親の復讐のためにテロを企てる。
アメリカ大統領キャザレットは間一髪難を逃れるが、更なる企てを防ぐ為にイギリスに戻ったディロンの目の前で惨劇が起こる・・・。
兄弟達は知らなかった、そのときディロンの心にわき上がった感情を。
そしてその本当の怖さを・・・。
いつものヒギンズがどちらかと言えばハリウッド的なストーリー展開だとすれば、今作は映画黄金期のヨーロッパ映画の雰囲気です。
表面上は静かにそしてシニカルに、しかしそのうちに秘める熱い感情。
まるであの映画の様に。
往年のヨーロッパ映画で印象的なシーンを彩ってきた雨が今作でも効果的に使われています。
しかも今作ではディロンファン、特に女性にはたまらない一言をディロンが自分の口から発します。

復讐の血族 (角川文庫)

復讐の血族 (角川文庫)

武王の門

時は鎌倉幕府が滅亡し建武の新政足利尊氏の前に消え去った。
そんな中南朝の復興を願い九州の地に降り立った皇子がいた。
名は征西大将軍「懷良」。
九州の地を南朝の勢力下におきそこからの反攻を目指し、忽那水軍と菊池武光を両輪に戦乱の中に飛び込む。
しかし長い戦乱の中で様々な体験をすることで彼はある夢を見る。
その夢とは・・・
ハードボイルド作家の北方謙三が始めて挑戦した歴史長編です。
既に確固たる地位を固めていた筆者がこの本で新たに新境地を開きましたね。
物語の中では日本史とは日本にはとどまらず、朝鮮・中国をも視野に入れた歴史のダイナミックな動きの中で成立していることが感じられますので、そういった意味でもおすすめの本です。

武王の門(上) (新潮文庫)

武王の門(上) (新潮文庫)

嵐の眼

人気作家ジャック・ヒギンズが送るショーン・ディロンシリーズの第一作です。
数々の魅力的なキャラクターを生み出してきた筆者がまた新たなヒーローを登場させました。
IRAの凄腕の闘士で悪魔的な知能と一瞬で自分の体を老若男女の姿にすることで1000の顔を持つ男として恐れられ、現在まで一度も逮捕されたことがない主人公ショーン・ディロン。
そんな彼の元に英・米に恨みを持つ大金持ちが攻撃を依頼する。
依頼を受けたディロンはその場で元首相サッチャーの暗殺作戦を提案し実行するが裏切りにあい失敗する。
そんな彼が選んだ次の標的は現役の首相メージャーだ。
そのディロンを捕まえるためにイギリス政府が選んだのはディロンと同じ元IRA闘士ながら以前にイギリス政府に協力してテロ事件を解決したことのあるブロスナン。
彼はディロンとは面識があり彼の手口に精通していた。
強力を渋っていたブロスナンだがディロンとの間に新たな因縁が生まれ、最強のハンターとなる。
悪魔的な知性で作戦を進めるディロンとそれを追う最強のハンターブロスナン。
一瞬1秒を争う展開の中で両者が火花を散らして戦う、テロは成功するのか?それとも防がれるのか?
この本は湾岸戦争中に実際にあったイギリスの首相官邸攻撃テロを題材にした物です。
作品中に出てくるエピソードは「テロリストに薔薇を (ハヤカワ・ノヴェルズ)」に関係していますので事前に読んでおくとされにこの作品を楽しめます。

嵐の眼 (ハヤカワ文庫 NV (852))

嵐の眼 (ハヤカワ文庫 NV (852))

龍の契り

世界の作家がテーマにしてきた香港返還にまつわる密約。
そのテーマにこの本がデビュー作の作家が挑む。
香港返還直前のイギリスで火事が起きオーディション中のモデル達が巻き込まれ死亡した。
その被害者達の中には身元が明かされない人もいた。
そして時は立ち中国系の血を引く女優が日本のトップクラスの企業の社長に謎めいた方法で接近する。
その意図は何か・・・そしてその結末は・・・
日・中・英各国の思惑が様々に絡み合い、そして国同士の思惑の中に個人の思惑がさらに絡み合って物語が複雑に絡み合って進行していって、最後まで気を許すことができませんでした。
人気作家の服部真澄のデビュー作ですが、このデビュー作を読むだけで何故人気作家なのかがよくわかるほどの圧倒的なリアリティと構成力です。

龍の契り (ノン・ポシェット)

龍の契り (ノン・ポシェット)