長州奇兵隊

幕末の歴史はイメージ先行で実際の姿が見えにくくなっていると私は感じています。
新撰組なんかはイメージ先行でも実像に関する著作も多くて対比して楽しむ事もできるのですが、奇兵隊に関してはそもそも詳しくふれられている事が少なくなかなか実像にふれる機会が少ないのが現状だと思っています。
そんな奇兵隊の実像を、当時を知る人からの危機語りを元に個々の隊員の活動を掘り下げたり、当時の日記等から同時代の人々の奇兵隊に対する思いを様々な資料から掘り起こした労作です。
同時代の人にとって奇兵隊に入るという事は眉をひそめて語られる事だったり、吉田松陰の神格化の過程等とても興味深い話がたくさん書かれています。
元勲と呼ばれ明治維新の英雄となって歴史の名を残した偉人たちを太陽だとすると、その日陰にはその何倍もの人が存在して、それぞれの人生を生きていた事がよくわかり、少しだけ奇兵隊の実像がわかったような気がします。
明治維新の光の部分だけでなく陰の部分にも興味がある方にはおすすめです。

長州奇兵隊―勝者のなかの敗者たち (中公新書)

長州奇兵隊―勝者のなかの敗者たち (中公新書)