室町の王権

現在天皇制の継承に関して注目が集まっています。
建前上は万世一系である天皇家の歴史に置いて、歴史上何度か存続の危機に瀕した事がありました。
この本はその中でも足利義満による王権纂奪計画に焦点を当てて、天皇家が持つ王権のあり方とその王権を義満がいかにして己の物としていくかをテーマとしています。
この本を読んでいると、義満の寿命が後数年長ければ天皇家の歴史は今とまったく違う物になっているであろう事がありありとわかります。
従来天皇家が保持していた国をまつる祭祀権、朝廷や寺社に対する叙任権、そして権力を支えるのに必要な財源をどのようにして己の物として、そしてそれを行使したのかが様々な資料を元に解説してあり、この義満の権力纂奪の過程がいかに凄まじく、そして周到であったのかがよくわかります。
読んでいて一番興味を持ったのは、義満の王権纂奪計画において一番働いていたのが本来は抵抗するはずの公家達であり、それに協力するはずの足利幕府の有力守護達が義満の死後即座に王権の奪取から手を引いていった事です。
従来言われていた天皇制の形骸化が戦国時代ではなく、その前の室町の時代には既に進んでいた事は日本の歴史を考える上できちんと把握しておく重要な事だと思います。

室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書)

室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書)